21_前へ前へと突き進む、激しい水流のような情動【7･戦車（The Chariot）】

　今回はカードナンバー【７】、戦車のカードです。

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【7･戦車（The Chariot）】

◆おおまかな意味：
目的を達成しようとする、情動で突っ走る、すばやく行動する、暴走、コントロール出来ない　など

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　四角い御者席にいるのは甲冑を身につけた若者です。彼は右手に笏を持ち、左手は御者席のへりに置いています。彼は手綱を持っていません。
　戦車の前にいるのは馬ではなく２頭のスフィンクスです。スフィンクスの色は白と黒…正反対の力を持つ２頭なのでしょう。彼はこの反対の性質を持つ２頭のスフィンクスをうまく操って前に進まねばなりません。手綱もなしに…果たしてうまくいくのでしょうか。彼は手綱の代わりとして笏…もしかして魔法のワンドを持っているのかも知れません。

　彼は若く、自信に満ちた輝かしい表情をしています。乗っている戦車も甲冑も美しい装飾がなされています。背後に立派な城々が見えます。戦場に向かう彼は強大な後ろ盾を得てやる気満々なのでしょう。彼はこれからまっしぐらに敵の陣地に攻め入り、相手を征服するつもりです。

　しかし彼は大した武器を持っていないように見えます。天蓋付きの重そうな戦車で上手く闘えるのでしょうか。スフィンクスはちゃんと彼の言うことを聞いてくれるでしょうか。魔法のワンドは彼の精神力・霊力の冴えを必要とするでしょう。集中力とコントロールがこの戦いの成否を決めるのです。

　若いが故に情熱とやる気に満ち、若いが故に経験不足と不安定さも感じさせます。戦車の前についた赤い『コマ』の飾りは、この戦車の動力が勢いに頼っているものであることを窺わせます。『コマ』は勢いが落ちるとバランスを維持出来ずに倒れてしまうものです。

　彼の両肩には三日月の飾りがついています。三日月も変化や不安定を連想させます。ですが同時に彼の感情や霊の力がとても強いことも表しています。彼の額にある八芒星の飾りは、彼の情熱・やる気・理想・霊力が、自ら輝きを発する恒星のように豊かにほとばしっていることを暗示しているようです。

　彼は自らの若い力を活かし、弱点を克服してこの戦車を乗りこなし、敵を征服させられるでしょうか。やる気と集中力が途切れないうちに、スピーディに勢いよく、勇気と大胆さをもって当たればきっと目的を果たすことが出来るでしょう。

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　ヒタチの場合はこのカードに『ほとばしる情熱によって目的を達成しようとする』という意味合いを持たせています。

　目的の達成や勝利にも色々あります。【4･皇帝】のように自らの権力と実行力で成される場合もあれば、【19･太陽】のように真っ当な努力と周囲のサポートによって勝利することもあります。【21･世界】のように、自分の道を歩き続けたことによってさまざまなことが統一・完成された上での達成もあるでしょう。

　このカードの場合はあふれ出る情動・やる気・欲望や野望といったエネルギーの存在が鍵となります。若者が恋をし、意中の異性を獲得しようと心がはやる、あの感じです。しかし募る想いを野放しにしていたのではうまく恋を叶えることは出来ません。相手に好印象を抱かせ、自分の気持ちが伝わるように行動する必要があります。心を抑えて言動をコントロールする必要があるのです。若者の心の不安定さ・経験不足から来る焦りや恐れを克服してはじめて、あふれる思いがめでたく遂げられるのです。

　白と黒のスフィンクスは【2･女教皇】での白と黒の柱とも対応しているようです。精神の肯定的側面と否定的側面…この相反する力のバランスを取ることで戦車は前方に進むことが出来ます。この戦車の車輪は輝くような黄金・もしくは黄色…知恵の車輪です。向こう見ずな自信だけでも不安や恐れだけでもなく、両方のバランスをとってこその前進です。

　ただし、バランスもさることながら、やはりそこには充分なエネルギーと勢いがなければなりません。【2･女教皇】のようにバランスを保っているだけでは前に進めないのです。彼には若さという強みがあります。たとえ未熟であっても彼の勢いと自信があれば、ある程度の目標ならどんどん達成していけることでしょう。背後のたくさんのお城や、燦々と輝く陽の光も彼の成功を後押ししています。

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　戦車＝車という連想から、目的を達するための手段（乗り物）に結びつけることもあります。スピードに注目したり、援軍＝サポートという側面を採り入れたりもします。

　またこのカードは巨蟹宮に対応することから四大元素【水】の性質と結びつけて解釈することもあります。巨蟹宮は西洋占星術ではカーディナル・サイン（活動宮）に属し、自発的に行動する性質を持ちますから、さしずめ『激しくほとばしる水流』といったところでしょうか。激しくほとばしりますからコントロールがしにくいところもカードの性質と一致します。

　若々しい男性が描かれたカードですが、実占では特定の人物として読むことはあまりありません（ヒタチの場合）。しかし恋愛問題ではよく見るカードで、展開によっては『熱心にアプローチしてくる男性が出現』というような解釈もあります。ただ質問者自身の恋心が募っている状態として出現することも多いため、特定の男性と限定して見ることはしていません。

　ウェイト版タロットでは、側に描かれている動物はその人物の本能を象徴し、また馬はその人物が使えるエネルギーを象徴しているそうです。このカードの場合、彼の本能と、使えるエネルギーのあり様が白と黒のスフィンクスで象徴されていると考えられます。彼の本能は獣のようでなく神性に満ちたものであり、エネルギーも根源的かつ精神的・霊的な要素に満ち溢れているといって良いでしょう。彼の衝動や欲望は決して邪な汚れたものではなく、生を前向きに進んでいこうとするあくまで純粋なものなのです。

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　このカードはスピーディな展開を示すカードであり、時間の幅は長くありません。ここで成された達成は不変永久の最終的なものではなく、次の展開が控えていると解釈するのが妥当です。ある敵を征服した後には別の征服すべき目標が…さもなければ戦後処理にも相応するような「その後の展開」があってしかるべきと考えます。

　恋愛の成就と見た場合、念願叶って恋人同士になったはいいけれど、勢いに助けられて叶った関係ですから情熱が冷めた後どうなるかまではわかりません。情熱が冷めてもラブラブな関係が続くように、それなりの努力が必要だと言えるでしょう。

　逆位置など否定的な現われ方をした場合は、性急に突っ走って失敗する、無謀・無鉄砲、暴走する、恐れのために好戦的になる、思い込みが激しくなる、などと解釈します。恋愛問題では次から次へと征服だけを目標とした異性関係を求めるなどと解釈する時もあります。

　このカードでは目的の達成だけが焦点となっています。達成した目的をどう扱っていくか、得たものをどのように維持し意味づけるのか、という点は他のカードと合わせて見なければなりません。
　このように短いスパンの時間を表すことも若者の特性と通ずるところがあります。若者の時間は濃く凝縮されています。それだけ精神の集中度が高いのです。

　ヒタチの場合、このカードの中に中学高校くらいの若者のイメージを重ね合わせます。青春の初期の、新しい輝きに満ちた空気を思い浮かべてみて下さい。この頃には恋、野心、感動をひたすら追い求め、今の気持ちを満たすこと・未来を夢見ることばかり考えているものです。自分を唯一特別な存在と考え、そのように行動します。そして自分を唯一特別な存在だと考えることで精神的な力を高め、大きな目標や夢に到達することが出来るのです。

　思春期にはあらゆることに特別な意味があると考え、運命と必然が常に自分に働きかけていると思うものです。愛と欲望は同一で見分けがつきません。迷ったり恐れたりしながらもひたすら未来に向かって純粋に突き進む…そこには自分が生きて存在していることへの、シンプルで強い確信と、肯定があります。

　若々しい心が持つ力強い大きな夢、穢れのない希望…人が誰でも短い間だけ持つことが出来る最も神聖な強い力と、その輝かしさを、このカードを通して見ることが出来るでしょう。

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　このカードは

　激しくほとばしる水流のような情熱、ひたすら前に進もうとする一途な想いの力強さと、危うさ

　を表していると思います。

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